『世田谷233』の作家さんを不定期でご紹介するコーナーです
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 【 !box pick up / No.003 】
 ■name : chiyo
 ■box no : B-08
 ■URL :
chiyokissa
今回のボックス・ピックアップは、ギャラリー・スペース「room」をミドリ色に変身させる大胆な演出と、今は亡き愛猫の事を綴った繊細で優しい絵本や絵が大好評の個展「sumire展」を開催中のchiyoさんにお話を伺いました。
中根:うちのギャラリーってカズドン、さいとうりかさんと初めての個展に使われることが多いんだけれど、chiyoさんも個展は初めてなんだよね?

chiyo:そうですね。去年の10月には友達と三人展をやったんです。一人は写真、もう一人はイラスト、そして私は油絵とフラワーアレンジメントという三者三様の三人展でした。そこではいろんな人に見てもらうことができたので、人の目に触れる快感を知ってしまったって感じですね。準備期間は、大変だったけど、連日、友人がきてくれたり、新たな出会いもあったりと楽しかったです。自分の世界や可能性も広がりました。

中根:今回の個展では、油絵、Tシャツ、流木といろんな素材が使われているけれど、創作活動っていうのは昔からやっていたの?

chiyo:もともと、モノを作ることが好きだったので、子供の頃から手芸とかお菓子作りとかいろいろやってました。絵を描くことも小さい頃から好きでしたね。母がやっているのをみて、私もやってみたいという気持ちになったということもあると思います。母は今でもいろいろアクセサリーを作るんですよ。油絵は中・高とやっていたんですけれど、社会人になってから描いたのって去年が初めてなんです。今は、絵を描くことが中心なんですが、お菓子も作るし、フラワー・アレンジメントもときどきやっています。あと、手芸も。今回の個展スペースの入り口の「のれん」は、私の手作りです。そこに描かれている猫の顔はステンシルでやりました。結構評判が良いのでうれしいです。

中根:そもそも個展をやろうと思ったきっかけは何ですか?

chiyo:今回のテーマは、私の愛猫で6月に亡くなったsumireです。sumireは、私にとって子供のような存在でした。今回の個展は、親バカみたいでちょっと恥ずかしいんですが、生前、sumireを知っていた人にも知らなかった人にもsumireのことをもっと知ってもらいたいなと。それがsumireへの供養にもなるんじゃないかと思ったんです。ペットを失うという同じ悲しみを持っている人の力にもなれれば幸いです。個展はやはり自分の世界を展開できる場所なので、思いっきりchiyoの世界、sumireのことを表現できればと思います。

中根:僕はアートでも何でも個人的な想いや動機が原動力になっているものってとても力があると思うし、実際惹かれるものも多いんだけれど、今回の個展もまさにそうだと思うんよ。真っ直ぐで嘘が無くてね。そういうものって大勢ではないけれど、確実に誰かの心を揺さぶることが出来るはず。実際自分もsumireちゃんのことを綴った絵本を読むたびに”うるっ”とくる。シンプルな内容なんだけれど、これよく出来てるよ。

chiyo:ありがとうございます。これは製作風景の写真を撮ってくれた佐瀬さんのアイデアでもあるんです。当たり前の様に傍にいてくれたものがいなくなった悲しみ。でも、sumireが与えてくれた喜びをいつまでも覚えていたい。そういう感情の流れを表現するのに絵本はよかったですね。別のストーリーでもまた作ってみたいです。
sumireはすごく甘ったれで、ひざの上に乗るのが好きでした。私が帰ると玄関まで迎えに来てくれたんですよ。今、家にはsumireの娘を含めて、猫が2匹いるんですが、やっぱり猫って私にとって特別な存在なんです。かわいいのもあるけれど、それだけではない。ほっとしたひとときを与えてくれたかと思えば、イタズラして怒らせたり、病気になったら心配もするし、私がさみしい時にさりげなく傍にいる。きまぐれなトコもかわいいですね。ずっと一緒にいるせいでしょうか?性格が猫っぽいと言われたり、目が猫目だと言われるんですよ。

中根:そう言われればそういう気がするなあ。犬ではないかも(笑)。chiyo さんはどちらかというとsumireちゃんのことやsumireちゃんとの思い出を“残す”という作業を行ったわけだけれど、個展をご覧いただいた方の感想の中に「自分もペットを飼っているんだけれど、もっとかわいがってあげようと思った」っていうのがあったよね。だから、”残す”という作業の中に織り込まれるものって、基本的には過去のものなんだけれど、それが“今”にも“これから”にもとてもいい影響を与えていると言えると思うんだよね。だから人も動物もいずれみんな最期のときを迎えるんだけれど、それぞれにいろんなつながりがあって、決してそこで終わりじゃないってことをとても感じさせてくれる個展だと思うんですよ

chiyo:そう言ってもらえるととても嬉しいです。私も今いる2匹をますます大切にしようと思いました。もちろん、それだけではなくて、単純に猫のかわいらしいしぐさとかが表現できればいいなあとも思っているんですよ。見つめるまなざし、すこやかな寝顔、強い視線。伝わるかな?でも見る人にそれが伝われば嬉しい。
後、自分の作品を見てもらいたいのもあるけど、それを見に来てくれた人との交流も楽しみです。前からの友達には、私の違う一面を知ってもらえるし、個展を通じてたくさんの人と話すのも楽しみのひとつです。アートって人によって感じ方が違うと思うので、自分の今後の展開に役立てていきたいです。なかなか会えない友達が来てくれたりすると、とっても嬉しくなります。

中根:友達とのつながりを大事にするっていう事からの発想なんだと思うんだけれど、今回はポラでお客さんと写真を撮る作業も行っているよね。

chiyo:個展にきて、ただ絵を見るだけではなく、来てもらったこと自体も形に残したいなと思ったんです。ポラならちょっとしたコメントも残せるし、感想をノートに書くのが苦手な人にもいいかなと思いました。来てくれた人と交流もできるし、実践BBS、とでも申しましょうか。今回の目玉企画でもあります。あわせてホームページを立ち上げたので、そちらのBBSにも書き込んでいただければと思います。お待ちしております。

中根:ボックスの方は、今のところヒマワリの花を飾っているけれど、これは今後どういう風に展開していくの?

chiyo:全然季節に関係ないモノを置いちゃっててすみません(笑)。これからは季節を感じさせる作品を置いていきたいなあと思っています。クリスマスっぽい展示も考えています。そうは思っていても、違うの置いてしまうかもしれないんですが。あと、お菓子作りや、手芸も好きなので、そっちの方も展開できたらと思っています。ボックス以外にも、自分の持っている知識の中から、お教室が開けたらいいなという野望もあります。

中根:”野望”っていいね。233は野望を実現する場所だから(笑)。教室はぜひやってください。というか、すでに今回の個展ではカズドンと僕を生徒に油絵教室が開催されたもんね。のれんもそうだけど、いろいろと教えてもらいたい人は結構いると思うよ。
今回のような個展とか、教室としてとか、233の使い方をどんどん広げてくれる人がもっと増えればいいと思っているんですよ。最初にギャラリーの趣味や方針ありきじゃなくてね。もちろん物理的な限界とか相性の問題はあるけれど、そういうのはほとんど想像力で解決できるんじゃないかと思っているんで。そういう意味で233に対して今後の要望とかご意見とかありますか?

chiyo:モノを作ることはこれからもずっと続けていきたいと思っているんですけれど、自分の作ったモノを発表する場所ってなかなか無いんですよ。だからボックスを通じて発表できるのはありがたいです。ちょっとした思いつきやアイデアが、自分のがんばり次第で実現できるのも233のいいところだと思います。同じような活動をしてる人と交流が持てるのも楽しいです。
ということで、これからも温かい目で私たちの活動を支えていってください(笑)。

現在開催中の「sumire展」では、展示されているのはほとんどがかわいい猫ちゃんたちという一見ほのぼのとした雰囲気に反し、実はとても強くて、しっかりとした想いが表現されていると思います。こういう個人の想いを共有出来るなんて、場所を提供する側にとってこんな嬉しい事は無いです。chiyoさん、これからもがんばってください。(2003.11.20)
chiyo 「sumire展」 〜イラスト、油絵他〜
場所:「room」
開催日:2003年11月01日(土)〜30日(日)